規制が解けたら投下してやろうと温め続けていたSSなのですが、
残念なことにVIPが転載禁止になってしまいました
というわけで、これからはブログにのみSSを投下しようと思います!!
寂しいことですね

 
1:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

魔王「というわけで姫をさらってきた」

姫「うーん……はっ、ここは!?」

魔王「くくく、目を覚ましたか。ここは魔王城だ」

姫「魔王城?ということは……私の城ではないのですか!?」

魔王「そうだ。絶望したか?」

姫「ありがとうございます!」

魔王「えっ」

姫「あなたは命の恩人です!」

魔王「ちょっと待って話が見えない」


2:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

姫「私の母は数年前に亡くなり、代わりに継母に育てられていたのですが」

魔王「その継母が鬼畜BBAだったという王道展開か」

姫「あの城を出ることができて本当に嬉しいです!」

魔王「状況をよくわかっていないようだな。私は悪い魔王だぞ」

姫「いいえ、あなたは素敵な魔王です!」

魔王「違う!悪い魔王だから、継母よりもひどいことをするっつってんの!」

姫「継母にされたことよりつらいことなんて、そうそうありません」

魔王「人間風情の嫌がらせが、私に敵うはずがないだろう」

姫「そんなことはありません!」


3:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

魔王「いつ殺されるのかわからない恐怖に怯えてもか?」

姫「継母の嫌がらせを受けるくらいなら死んだ方が幸せです。むしろ殺して下さい!」

魔王「え」

姫「あなたは私を殺してくれるんですか!?」

魔王「い、いや。私は悪い魔王だからお前の望むような展開にはしないぞ」

姫「そうですか……」

魔王「ちなみに参考までに、いったい何をされたんだ?」

姫「●●●●とか●●、料理に●●を入れられたり、靴の中に」

魔王「やめてもう聞きたくない」


4:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

姫「他人と話すのも久しぶりです。もっとお話ししましょう!」

魔王「……お前のようなブスと話していても面白くない」

姫「!!」

魔王(くくく……これはさすがに傷ついただろう)

姫「ブスですって!初めて言われました、感激です!」

魔王「!?」

姫「今までは周りが、私が美しいからと贔屓したり嫉妬してばかりでした」

魔王「うぜえ」

姫「魔王さんは私を対等に扱ってくれるんですね!ありがとうございます!」

魔王「何こいつ面倒くさい」


5:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

魔王「色々試したが、放置が一番ダメージ大きいようだったので放置してきた」

魔王「私は悪い魔王にならなければいけないのに……」

魔王「何をどうすれば悪い魔王になれるのだろうか」

魔王「誘拐の初手は失敗したが、まだ挽回できるはずだ」

魔王「悪逆非道の手を尽くし、立派な魔王になってみせる!」

魔王「くくく……覚悟していろ、姫よ」


6:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

魔王「とは言っても、具体的には何をすればいいのか」

魔王「外道といえば、まずは拷問か」

魔王「しかし拷問といっても何をすればいいのか……仕方がない、ググるか」

魔王「えーと、何なに。石抱きか」

魔王「こんなにきれいに切りそろえた石を用意するのは大変そうだな」

魔王「手軽にできそうなものは……爪を剥ぐ?」

魔王「爪を……」

魔王「想像するだけで爪が痛くなってきた……実際に見ると耐えられなさそうだな」

魔王「うーん、他に手軽にできそうなものは……」


7:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

魔王「おい姫」

姫「あ、魔王さん!来てくれたんですね!」

魔王「質問だ。お前の嫌いな食べ物はなんだ」

姫「うーん、そうですね。ケーキでしょうか」

魔王「け、ケーキが嫌いなのか?めずらしいな」

姫「はい、基本的に甘いものは苦手なんです!」

魔王「そ、そうか。わかった」

魔王(ケーキか……最近作ってないけど作れるかな……)


8:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

魔王「姫、餌だ。這いつくばって食うがいい」

姫「これは……ケーキ!?」

魔王「くくく……生クリームたっぷりのな」

姫「魔王さん、まんじゅうこわいって知ってます?」

魔王「いや?」

姫「そうですか。ケーキがご飯なんて残念です……」

魔王「ふはは!フォークももちろんないぞ。犬のように食べるんだな!」

姫「あ、それはよかった。私テーブルマナー苦手だから助かります!」

魔王「ちょっと待ってろ!今フォーク持ってくるから!」


9:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

魔王「何とか拷問に成功したな」

魔王「くくく……姫のやつ、泣きながらケーキを貪っておったわ」

魔王「さて次は何をするか」

魔王「思いつかないからググるか。どれどれ」

魔王「なん……だと……」

魔王「外道のすることといえば凌辱だと!?」

魔王「う、うーむ。しかし悪い魔王になるためだ。仕方がない」


10:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

魔王「姫よ」

姫「あ、魔王さん!こんな時間にどうしました?」

魔王「お前には今から夜伽をしてもらう」

姫「えっ……本気ですか?」

魔王「ふ。恐怖で震えているようだな」

姫「いやっほおおおおおおおおおおおおおおおう」

魔王「!?」

姫「あれですよね?乱暴する気ってことですよね!?同人誌みたいに!」

魔王「何このテンションこわい」


11:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

姫「やっぱり魔王っていうとあれですか?触手プレイですか!?」

魔王「えっ」

姫「あ、それとも産卵プレイですかね。まさか両方!?」

魔王「いや、あの」

姫「私そういうのに疎くって、薄い本で必死に勉強したんですよ!」

魔王「なんで薄い本で勉強するんだ!?」

姫「他にも異種姦本も読みました!オークですか?オーク召喚しちゃうんですか!?」

魔王「年頃の娘がそんな単語を連発するんじゃない!!」


12:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

魔王「くくく……しかし、本で読むのと実際とでは、恐怖は違うだろう」

姫「えぇ、きっと想像を絶する屈辱なのでしょう!」

魔王「えー……」

姫「おそらく魔王というくらいですから、技術も計り知れないものでしょうね!」

魔王「ちょ」

姫「快楽に溺れ、汁という汁をまき散らすまで開発されてしまうんですね!」

魔王(そこまでの自信はない)

姫「魔王城に来てから、ずっと妄想してイメトレしていたので準備は万全です!」

魔王「妄想してたのか……」

姫「さあ魔王さん!いつでもどうぞ!!」


13:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

魔王「……やはりやめておこう」

姫「えっ」

魔王「私は悪い魔王だから、お前の望みを叶えるのはちょっと……」

姫「ええええええええええええええええ」

魔王「とりあえず放置が一番嫌がるようだからそろそろ戻ることにする」

魔王(というか期待されすぎて、プレッシャーがつらい)

姫「そんなあ!放置プレイも慣れてきたのでそろそろ目覚めそうなのですが!」

魔王「放置まで喜び始めたら私はどうすればいいんだ……」


14:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

魔王「何あの姫手強すぎる」

魔王「もう帰したい……しかしここで帰すのもな」

魔王「城側から見れば、私の気まぐれで帰したように見えてしまう」

魔王「気まぐれで人質を帰すなんて、悪い魔王のすることじゃないしな」

魔王「かといって正直に話すのも、私が姫に負けたようで悔しい」

魔王「どうにか姫をギャフンと言わせたいが……」


15:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

魔王「おい、姫」

姫「あ、魔王さん!」

魔王「……私が来ると嬉しそうな顔をするな」

姫「はっ!いえ、嬉しくないです!魔王さんこわいですし!!」

魔王「そ、そうか。ならよかった」

姫(セーフ。また放置されるところでした)

魔王「姫の着替えを持って来たぞ」

姫「!こ、この服は……」


16:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

姫「ボロボロの布の服!」

魔王「ふん。お前など、この服で十分だ」

姫「シンデレラみたいで素敵ですね!!」

魔王「は?」

姫「私好きなんですよねーシンデレラ。下克上って感じで!」

魔王「そ、そうなのか」

姫「はい!私は姫の身分なので下剋上無理ですし……わぁ、絵に描いたようなボロボロ加減!」

姫は 布の服を 装備した!

姫「うふふ、似合ってますか?」

魔王「やっぱり今すぐ脱げ」

姫「あ、監禁プレイですか?それなら猿轡と足枷の用意を」

魔王「違う!!」


17:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

魔王「おい姫」

姫「魔王さん!また来てくれ……きやがったんですね!顔を見るだけで反吐が出ます!」

魔王「そ、そうか。なら頻繁に来てやろう」

姫「かんげ……最悪の気分です!」

魔王(さすがにちょっと落ち込む)

姫「ところで何かご用ですか?」

魔王「あぁ、お前の嫌いなものをもっと聞こうと思ってな」

姫「嫌がらせのネタ切れですか?」

魔王「それは言うな」

姫「すみません」

魔王(このポジティブすぎる姫を、あれほど苦しめた継母は何者なんだ……)


18:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

姫「されて嫌なことですか……うーん」

魔王「たくさんあるだろう。さぁ吐け」

姫「あ。頭をなでられることですね」

魔王「は?」

姫「雑誌とかで読んだことないですか?」

姫「女性は、まったく好意を抱いていない異性になでられると嫌悪感を抱くんですよ」

魔王「な、なるほど。こうか?」ナデナデ

姫「えへへ。すごく気分が悪いです!」

魔王(まったく好意を抱いていないのか……いや当たり前だが)ナデナデ


19:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

姫「今日はどうしたんですか?部屋から連れ出したりして」

魔王「いいから食堂の扉を開けろ」

姫「!?こ、これは!?」

魔王「ふ。お前の嫌いなごちそうだ!」

姫「こんなにたくさん……これでは胃が悲鳴を上げてしまいます!」

魔王「ちなみに、テーブルクロスは新品だ」

姫「汚せないじゃないですか!ひどい!!」

魔王「くくく……椅子もアンティーク製だぞ」

姫「しかもこんなに広い部屋なんて、落ち着かない!」

魔王「今夜は存分に苦しむがいい!ふはは!!」

姫「鬼!悪魔!!人でなし!!!」


20:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

魔王「さて今日はどんな嫌がらせをしてやろうか」

姫「魔王さんの話なんて絶対聞きたくないです」

魔王「何?」

姫「特に、魔王さんがなぜ悪い魔王になりたがっているのかとか、興味ないので話されると苦痛です」

魔王「そ、そうか……ならば話さなければなるまい」

姫「わくわく」

魔王「ん?」

姫「いえ何でもありません!」


21:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

魔王「魔王とは魔物を統べる王だ」

姫「読んで字のごとくですね」

魔王「魔王が優しければどうなると思う?」

姫「平和になるんじゃないんですか?」

魔王「人間に付け込まれ、魔物が滅ぶ」

姫「そんなことは……」

魔王「ないと言い切れるか?人間同士ですら、王同士で牽制し合っているというのに」

姫「……」

魔王「人間同士でも、他国は敵だ。それが人間と魔物になれば、その隔たりはもっと大きなものになる」

姫「隔たり……」


22:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

魔王「過去には実際、優しい魔王も存在したらしい」

魔王「その男は、人と魔物の共存を望み、訴えたというが」

魔王「案の定、人間に裏切られ、奪われ、それでも必死に立ち向かい」

魔王「最後にはその願いが叶ったというが……私にはそのような強さはない」

魔王「だから私は魔王の座を継いだ時、悪い魔王になろうと決めた」

魔王「人間に恐怖心を植え込み、魔界を……魔物たちを人間の手から、争いから守ろうとな」

姫「魔王さん……」

姫(それってすごく、優しい魔王ですよ……)


23:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

魔王「ふん、つまらん話をしたな。いい気味だ」

姫「そうですね、とても退屈でした」ナデナデ

魔王「!?お、お前何をしている!?」

姫「いえ、あまりにも魔王さんが憎いので私も復讐しようかと」ナデナデ

魔王「なっ」

姫「嫌な気分しますか?」

魔王「……そうだな。想像以上に不愉快だ」

姫「そうですか、ならもう少しこのままでいますね」ナデナデ

魔王「……」


24:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

魔王「おい姫」

姫「あー、魔王さん」

魔王「?お前……まさか熱があるのか?」

姫「はい、なんだか調子悪くって」

魔王「昨日ベランダで長話をしていたせいか……ちっ、これだから人間は」

姫「あ、看病とか絶対にしないでくださいね!」

魔王「は?」

姫「宿敵である魔王さんに看病されるなんて御免ですから!死んだ方がマシですから!」

魔王「そうか……そこまで嫌がるのならばするか、看病」

姫(っしゃああああああああああ!)


25:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

姫「うふふ」

魔王「何か嬉しそうじゃないか、お前」

姫「いいえ。嫌悪感で気が狂いそうで正気を失っているだけです」

魔王「そうか?ほら、お前が絶対に食べたくないと言っていた雑炊だ」

姫「私あれ嫌いなんですよね!少女漫画みたいにあーんってされるの!」

魔王「は!?」

姫「ロマンチックな言葉とか、甘ったるい展開とか大嫌いで!」

魔王「う、そうなのか」

姫「あれをされたら発狂する自信があります!!」

魔王「ぐ……」


26:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

魔王「苦行だった」

姫「えへへ、幸せすぎて発狂しそうです」

魔王「え?」

姫「間違えました。気分が悪すぎて全部戻しそうです」

魔王「ふ。それならばよい」

姫「もし魔王さんが風邪をひいたら、復讐にやり返してあげますね!」

魔王「そんなに期待せずとも、魔王は風邪などひかん」

姫「ちぇー」


27:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

魔王「食べ終わったのならさっさと寝ろ」

姫「風邪の時、寝る時に手を繋いでもらうと安心するって、よく言うじゃないですか」

魔王「ん?なんだいきなり」

姫「私あれ絶対やりたくないんですよね。特に魔王さんとは」

魔王「!!?」

姫「あー魔王さんと手を繋ぎたくない!考えただけで寒気がしてきました!」

魔王「いくらなんでもそれは……」

姫「あ、魔王さんってば怖気づいたんですね。それはよかったです!」

魔王「くっ……」


28:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

姫「人生で一番最低な思い出ですねこれは」ギュー

魔王「なんだか握る力が強い気がするが……」

姫「あわよくば魔王さんの手を折ってやろうと思いまして」

魔王「お前の力で折れるわけがないだろう」

姫「それは残念です」

魔王「もういいから早く寝ろ」

姫(魔王さんの指長いなぁ)

魔王(やわらかくて小さい手だな……折れそうだ)


29:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

姫「完全復活です!」

魔王「私が面倒を見てやったんだから当たり前だ」

姫「さて私も元気になったことですし、今度はどんな嫌がらせですか!?」

魔王「いや、今日は用事があるから出かけてくる」

姫「なんですって!?」

魔王(何か普段嫌がらせしてる時よりもショックを受けているのだが……)

魔王「ちなみに、残念だが私がいないからといっても城からは出られないからな」

姫「あ、その発想はないのでご心配なさらず!」

魔王「いや発想しろよ……まぁいいやいってくる」

姫「いってらっしゃーい!」

魔王(誰かに見送られるのも久しぶりだな)

姫(何だか今の新婚さんっぽかったですね。うふふ)


30:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

姫「さて……魔王さんが出て行って、この広い城に取り残されたわけですが」

姫「この絶好のチャンスを逃すわけにはいきません」

姫「魔王さんがいない今、やることはひとつ……」

姫「もちろん卑猥な本探しです!!」

姫「魔王さんの趣味・嗜好を知るまたとない機会ですよ!」

姫「ふふふ……私を部屋に閉じ込めておかなかったことを、後悔するがいいのです!」


31:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

姫「ど、どこにもない……だと……」

姫「そんなバカな!健全な青年なら薄い本の一つや二つ持っているはず!」

姫「それともまさか、魔王さんは不能なのでしょうか……うーん」カチッ

姫「?今のは何の音ですか?」ゴゴゴゴゴ

姫「こ、これは!本棚の裏に隠し扉が!!」

姫「こんなところに隠しておくなんて……さすが魔王さん!」

姫「しかしここが年貢の納め時ですよ!」


32:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

姫「なんということでしょう」

姫「隠し部屋にも卑猥な本は一冊もありませんでした」

姫「しかし!代わりにこんな物を見つけましたよ!!」

姫「じゃじゃーん、魔王さんのアルバムです!」

姫「当初の予定とは違いますが、これはこれで結果オーライです」

姫「それでは魔王さんの幼少時代、御開帳ー!」

姫「か」

姫「かわいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」


33:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

姫「何ですかこの生き物は!反則ですよ!!」

姫「魔王さんって小さい時から目つきが悪かったんですねぇ」

姫「あはは、転んで泣いてる」

姫「全部同じ部屋の写真ですね……魔王さんの部屋だったのでしょうか」

姫「泣いてる写真が多いなぁ。魔王さんって泣き虫だったのかも」

姫「……あれ?」

魔王「こら」


34:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

姫「あ、魔王さんおかえりなさい!」

魔王「姿が見えないと思ったら、こんなところにいたのか」

姫「もしかして心配してくれましたか?」

魔王「バカを言うな。結界を破って逃げたのかと思って驚いただけだ」

姫「ちぇ。それよりも、このアルバムなんですけど」

魔王「ん?あぁ、また懐かしいものを」

姫「中途半端なページで終わっちゃってるんですよ。続きはどこにあるんですか?」

魔王「?そのページで終わりだぞ」

姫「へ?」


35:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

姫「またまた。恥ずかしいからってそんな」

魔王「いや、本当だ。それより先の写真はない」

姫「そんなわけないですよ。だってまだ5、6歳くらいですよこれ」

魔王「あぁ。そのくらいの歳に母が死んだからな」

姫「えっ」

魔王「母は勇者に討伐される際に、私を封印した。勇者に見つからないようにな」

姫「そうだったんですか……」

魔王「母が死んでから封印が解けるまでの間の写真がないのは当たり前だ」

姫「……すみません」

魔王「?何を謝っている。母親がいないのはお前も同じだろう」

姫「それはそうなのですが」


36:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

姫「魔王さんのお母様の命を奪ったのは勇者……人間なんですよね」

魔王「魔王と勇者、魔物と人間は敵対すべき存在だからな。当然のことだ」

姫「魔王さんのお母様は悪い魔王だったのですか?」

魔王「人間にとっては、そうだろうな。戦が起きれば、人を殺さなければいけないのが道理だ」

姫「……本当は優しい方だったんでしょうね。魔王さんの写真を見ればわかります」

魔王「母は写っていないだろう」

姫「はい。でも、魔王さんへの愛情は伝わってきますよ」

魔王「そうだな……良い母親だった、ような気はする。あまり記憶にないがな」


37:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

姫「魔王さん、今日もお出かけですか?」

魔王「あぁ。最近人間どもの動きが妙でな」

姫「ということは今日も嫌がらせはなしですか……」

魔王「だから何でそんなに残念そうなんだお前は」

姫「一人だと寂しいじゃないですか。なるべく早く帰って来てくださいね!」

魔王「留守にしていた方がお前が苦しむというのなら、遅く帰るか」

姫「なんという鬼畜!」

魔王「くくく……私は悪い魔王だからな」

姫(そういえばそんな設定でしたね。たまに忘れそうになります)

魔王「では行ってくる」

姫「いってらっしゃい!」


38:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

姫「悪い魔王か……」

姫「魔王城に来てから、正義と悪について色々と考えるようになりました」

姫「昔から、魔王といえば悪だと教わってきましたが、そもそもおかしな話ですよね」

姫「魔物を統べる王であるだけなのに、悪だと決めつけるなんて」

姫「今思えば"人間にとって都合の"悪い魔王、だったのでしょう」

姫「種族が違えば戦が起きるのは当然です。どちらかが降服しなければ終わらないのですから」

姫「虐げられることになるとわかっているのに、降服なんてできるわけがない。人も、魔物も」

姫「そんな当たり前のことも、私は知らなかった」

姫「私だけじゃない、おそらく大部分の人がそうでしょう」

姫「魔王さんがあんなに優しいことも……誰も知らないんですね」


39:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

姫「どうしましょう。絶望的な事態です」

姫「今日も今日とて、卑猥な本が見つかりません!」

姫「昨日の様子からいって、魔王さんはまだ帰ってこないはず……もう少し探しますか」コンコン

姫「?窓の外から何か音が……ここは最上階のはずですが」コンコン

姫「気になりますね。開けてみましょうか」ガチャ

姫「!?」

姫「あ、あなたは……」


勇者「姫!やっと見つけました!!」


40:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

姫「な、なぜ勇者……様がここに?城には結界が……」

勇者「はい。魔王城の扉は結界で堅く閉ざされていました」

姫「ならばどうして……」

勇者「どこか入れる場所はないかと必死に探したのです。仲間が魔王を引きつけている隙に」

姫(魔王さんが結界を張り忘れるはずがない)

姫(きっと……私が息苦しくないように、最上階だけ内側から窓を開けられるようにしてくれたんですね)

勇者「さぁ姫、一緒に城へ帰りましょう!」

姫「お断りします」

勇者「!?」


41:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

姫「城へは戻りません。私はここへ残ります」

勇者「ど、どうしてそのようなことを……」

姫「城よりもここの方が心地良いからです」

勇者「!」

姫「私は、これからも魔王さんと共に過ごしたい」

勇者「魔王の術にでも嵌ったのですか!?それとも弱みでも……」

姫「彼はあなた方が想像しているような方ではありません!」

姫「魔王さんは優しくて、温かくて、それに……」

魔王「よせ、姫」


42:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

姫「ま、魔王さん!?いつからそこに……」

魔王「勇者が入って来た時からだ」

勇者「魔王……貴様、姫に何をした!!」

魔王「黙れ勇者。そして去れ。私は今すこぶる機嫌が悪い」

勇者(俺の今の実力では勝てない……くそっ、仕方ない)

勇者「姫、必ずまた助けに参ります。リレミト!」

魔王「……行ったか」

姫「魔王さん、あの……」

魔王「姫、今すぐ支度をしろ」

姫「?どこかへ出かけるんですか?」


43:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

魔王「今からお前を城へ帰す」

姫「!?ど、どうして……話を聞いていたんじゃ」

魔王「あぁ、聞いた。聞かなければよかったと後悔した」

姫「それって、どういう……」

魔王「私は悪い魔王だ」

魔王「お前がここを心地良いと感じていると知った以上、置いておくわけにはいかない」

姫「そんな……」

魔王「本当はもっと早く、こうするべきだったのだ」


44:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

姫「わ、私は魔王さんが本当は優しい方だって知っています」

姫「私の前でまで、悪い魔王のふりをすることなんて、ないじゃないですか」

姫「ここを出て行くなんて……魔王さんの傍を離れるなんて、嫌です!」

魔王「……私がただの魔物なら、それでもよかったのだろう」

姫「魔王さん……」

魔王「私は魔物を統べる王だ。人々から畏怖され、疎まれる存在でなくてはならない」

姫「そうでないと……魔物を守れない……」

魔王「私とて知っていたのだ……お前が嘘を吐いていたことを」

姫「!」


45:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

魔王「この城に着いたばかりの頃、お前は恐怖心を悟られまいと明るく振る舞っていたな」

姫「ばれて、いたんですね」

魔王「その後は逆に、私を嫌っている振りをしていたこともな」

姫「知っていて……知らないふりをしていてくれたんですか」

魔王「我ながら愚かなことをしたと思う」

姫「前から思ってましたけど、魔王さんって不器用ですよね」

魔王「お前に言われたくないがな」

姫「ふふふ」


46:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

姫「魔王さんはやっぱり、悪い魔王ですね」

魔王「ん?」

姫「あんなに優しくしてくれて、一緒にいたいと思わせておいて追い出すなんて」

魔王「……」

姫「大嫌いですよ、魔王さん。あなたは本当にひどい方でした」

魔王「そうか」

姫「はい。ですから……」


47:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

姫「今まであったことを、帰ったら全部ばらしてやります」

魔王「は?」

姫「ケーキ作りが上手なこととか、凌辱しろと言ったら赤面してたこととか」

魔王「ちょ」

姫「優しく頭をなでてくれたこと、早起きしてご馳走を作ってくれたこと」

魔王「おい」

姫「風邪をひいた時に看病してくれたこと、私が寝るまで手を握っていてくれたこと」

魔王「やめろ」

姫「お城に帰ったら、復讐として全部みんなに話してしまいますから!」

魔王「やめてくれ!!」


48:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

魔王「お前さ……そこは私の意を汲んで黙って帰るところだろうが……」

姫「私に常識を求めること自体が間違いなのです!」

魔王「開き直ってやがる」

姫「さぁ、どうしますか。私を帰して魔王としての威厳を失うか」

姫「このまま残して、姫をかどわかした魔王として悪名を轟かせるか!」

魔王「……この機会を逃すと、もう二度と帰れないかもしれないぞ」

姫「覚悟の上です。というか、むしろそれを望んでいます!」

魔王「はぁ……なんという無茶苦茶な姫をさらってしまったんだ、私は」


49:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

魔王「負けたよ、降参だ」

姫は 魔王に 勝利した!

魔王「私は悪い魔王だからな。お前を一生閉じ込めるぞ」

姫「はい、ありがとうございます!」

魔王「おい抱きつくな」

姫「違います!首を絞めてるんです!!」

魔王「はいはい……」

姫「魔王さん大好……大嫌いです!」

魔王「……私もお前が大嫌いだよ、姫」


50:以下、名無しにかわりまして魔王がお送りします

むかしむかし、あるところに悪い魔王がいました

魔王は美しい姫をさらい、閉じ込めてしまいました

そんなある日、ひとりの勇者が立ち上がり

姫を救おうと、魔王に戦いを挑みました

ですが、勇者の力は魔王にはとても及ばず

魔王は姫と死ぬまで一緒だったとさ

めでたしめでたし


おわり